9 迷宮としてのデータベース くまきち
<迷宮と迷路>]
この章からテーマを変えて、アイデア発見とライティングの元となる資料(データ)について論じている。
二つのメタファーを提示
迷路(メイズ):枝道を避けながら入り口から出口までの最短距離を見つける。閉じたイメージ。
迷宮(ラビリンス):どの箇所にも枝道がない。後戻りさえしなければすべてを辿りつくして帰還できる。 ライティングの元となるデータ(知識体系)の特性は迷宮的なもの。
反対に、閉じた書物、ツリー状の体系、直線的テキストで表されるものは迷路的なもの。
<デューク・エリントン・データベース>
迷宮としての知識体系の構築方法について言及。
構築したいデータベースの姿
データの中をさまよって、あらゆるデータを味わい、体験して、またもとの場所に戻ってくるようなデータベース。
同じデータから別種の知識体系、あるいはカウンター・ストーリーを探し出せるようなデータベース。
データベース化は体系化ではない。
手持ちの情報、知り得る情報を徹底的に相互関係づけする。
具体例
デューク・エリントン論のためのデータベースを作り、ジャズの音楽の仕組みを探る。
文化史におけるステレオタイプの歴史のカウンターストーリーを提示する。
データベース作成のための具体的手順
演奏レコードから以下の情報をデータベースに入れる。
作曲家、タイトル、演奏者の名前、レコード会社、レコード番号、録音日時
データベースソフト「Q&A」
インテリジェンス・アシスタント機能:英語で質問するとデータベースを操作して答えを出してくれる。
<ステレオタイプの文化史>
データベスから探り出せた、ステレオタイプの歴史のカウンター・ストーリーについて
ステレオタイプの歴史(それが肯定的でも蔑視的でも)を越えて、自分たちの存在の根拠を見出すためにどうしたらいいか?
西洋の芸術作品をそのまま踏襲していては「模倣」とみなされる。
どこかで非ヨーロッパ的作品を作ることが必要。
方法1:ヨーロッパの眼差しで自分たちの中にある非ヨーロッパ的なものを見つけ出し、それを自分の「民族意識」の拠り所とする。音楽であれば「新古典派」的手法。
ポール・ホワイトマン楽団の演奏例
https://www.youtube.com/watch?v=oadzppD9Rv8
フレッチャー・ヘンダーソン
https://www.youtube.com/watch?v=CU0ybjKEuX8
方法2:ヨーロッパ文明の形式性を破壊する。野蛮で美しくて洒落ているもの。
ルイ・アームストロング
https://www.youtube.com/watch?v=BhVdLd43bDI
エリントンはどちらの方法も取らずに今までに存在しなかった表現方法を見つけていった(←二元論を越えているね)。
エリントンのデータから新たなジャズの知識体系をつくり、カウンター・ストーリーとしてのジャズの歴史が語られると、ステレオタイプの意味を明確にすることができる。
Solitude
https://www.youtube.com/watch?v=55kH1rWDzM0
In a Sentimental Mood
https://www.youtube.com/watch?v=7UKGc8J463k
コール・ポーターの曲(I've Got You Under My Skin)
https://www.youtube.com/watch?v=SURkkJaH5b4
<ザナドゥ・プロジェクト>
知識の集積をそのままコンピュータで取り扱おうとする試み。
テッド・ネルソンが提唱。
データベースの中の知識の体系を自由に再構成していくことを目指したもの。
データから出来上がったそれぞれの書物自体は閉じた書物だが、それぞれ準拠している別の書物・すべてのデータが書き込んでいる書物があってもいい。
迷宮としてのデータベースは開いた書物。
ありとあらゆるデータが相互に関連しながら、新たなデータを呼び出す。
情報は非線形的なテキスト(ハイパーテキスト)で書かれる。
ネルソンのwikiを読むと、ハイパーテキストは単にwwwのことだけを指しているのではないようだ。
感想
他の方のまとめ
前の章
次の章